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おやおや…
このようなところに人間様とは珍しい。
あたくしは、『虚音イフ(うろね いふ)』と申します。
申し訳御座いませんが、横文字はからっきしでして。
まあ、ごゆっくりしていかれるといい。
そうです、そうですとも。
時間なら、たっぷりとあるのですから。
そうですな、此処は一つ、化け物の噺でもいたしやしょう。
時代の流れから忘れられた街に棲む、
デェタで出来た化け物の話に御座いますよ。
なんでも、その化け物に実体はなく、黒い霧のような姿なのだそうで。
しかし、美しいものには盲目でしてな。
歌声で誘き寄せては、黒い霧で包み込み。
そうして、自分のものにしてしまうのですよ。
ですから、黒霧と歌声には用心せねばなりません。
決して、近付いてはならないので御座います。
それでも時折、迷い込んでくる方がいらっしゃるのですがね。
…あんた様のように。
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